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| 2001/1/29 |
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『喜びは悲しみのあとに』
著 者:上原隆 出版社:幻冬舎
発行日:1999/12 本体価格:1,500円
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『友がみな我よりえらく見える日は』・・・どうするんでしたっけ?。石川啄木の歌ですね。この歌を冠した上原隆さんの単行本を読んだのは、4、5年前ではなかったかと思います。上原さんはこの本について『つらいことや、悲しいことがあり、自分を道端にころがっている小石のように感じる時、人は自分をどのように支えるのか?』がテーマであったと書かれています。ごく「普通の人」でありながら、どこか「あたりまえ」を外れていってしまった人たちを取材したルポルタージュ。とりわけ、毎晩ファミリーレストランでひとりで食事をしながら読書する40代の独身のOLの方の話が印象に残っています。なんとない心の傷を抱えながら、寂しいわけでも、それほど充実しているわけでもない、ひとりの時間を生きていくということ。とりたてて責められるほど特別なことではないのだけれど、どこか「普通」との間に生じてしまったズレ。ルポとはいえ、現代社会の病理を追求するようなスタンスではなく、「さまざまな生き方」を文学的余韻を感じさせる切り口で見せてくれた不思議な本でした。続刊が出たと聞いていたのですが、なかなか手にとることができず、今になってようやく入手しました。それが、本書です。
障害を負った息子と暮す作家。倒産により失職した新聞記者たち。手ひどいイジメにあっていた中学生時代を振りかえる23歳の女性。超合金ロボットに囲まれて暮す大人の男性。愛人をつくった夫と離婚することになった二児の母親。リカちゃん人形になりたかった男性。「子殺し」裁判の傍聴をライフワークにする母親。渋谷でキャッチセールスを続ける若い男性・・・。人生のめぐり合わせの妙で、多少なりとも、普通ではない目にあった人たちや、普通ならざる嗜好を選んでしまった人たち。「良くある話」かも知れないけれど、個人的には大きな不運、レールを外れてしまった実感、それでも「壊れず」に生き続けるということ。いつしか『喜びは悲しみのあとに』訪れて、振りかえって笑える時がくる、のか。さまざな人生の相貌を見せられて、うーん、と唸っています。皆、色々な思いを抱いて、今を生きている。「涙とともにパンを食べる」ような思いが人生を味わいを深くするという言葉がありますが、それがただの慰めでないなら、本当に良いのだけれど。
「他人からは不自然に見えても、それは、その人なりに精一杯バランスをとろうとしている姿なんだ」ということを言われたことがあります。だから無理に「普通」にさせようとすると、逆にバランスを崩して壊れてしまう。世界と均衡を保つために、アンバランスな生を生きざるを得ないということもまた、ある。「変」な人などいない、いや、いるけれど(笑)。「普通」や「あたりまえ」に驕らないでいたいと思います。 |
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【楽天ブックススタッフ 知】 |
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