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| 2002/12/27 |
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『半落ち』
著 者:横山秀夫 出版社:講談社
発行日:2002年09月 本体価格:1,700円
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今年一番の話題小説(と、いっても決して過言ではないはずです)このミステリーがすごい!国内編で1位を獲得して週刊文春のミステリーでも1位。そしてさらには…と、ここから先は来年明かしましょう。ま、でも、来年もこの本の話題から年が始まる予感がします。
あんまりみんなが「良い!」「泣ける!」「今年ナンバーワン!」なんて絶賛するので、少し疑ってかかっていたのです。とはいっても『陰の季節』でぐぐっと心をつかまれた後なので、楽しみなのには違いありません。
痴呆で苦しむ姿を見るに見かねて妻を殺した…と自首してきた梶警部。彼はその温厚で実直な性格を多くの人に愛され、心酔された立派な人物でした。取り調べでは罪を素直に認めながらも、妻を殺してから自首するまでの2日間の空白については堅く口を閉ざし、何も語ろうとしません。そんな「半落ち」状態の傍らで進められる家宅捜索では、コートの中に歌舞伎町のティッシュが見つかります。「彼は妻を残して、歌舞伎町に何をしに行っていたのだろうか…」誰もが口に出せない思いを抱き、かたや警察は自組織の体面を保つべく隠蔽工作に入ります…
警察で取り調べを行った刑事・検察官・事件に疑問を抱く新聞記者・弁護士・裁判官・刑務官・・・と事件処理の流れに沿って語り手の視点が変わっていくのが特徴でした。梶が痴呆に悩む妻を抱えていたように、誰もがプライベートには何らかの悩みを持ち、梶の姿に自分を重ねながら思い悩みます。梶は「人生五十年」という書を掲げていて、そこからは来るべき時が来たら自分で幕引きをするであろうことが明白なのです。これまた同年代を生きる語り手たちの心を揺り動かすことでした。(これはきっと同年代のサラリーマンにはぐっさりと刺さること間違いなしでしょうね)
私が一番感銘を受けたのは、彼らの公務への取り組み方でした。各々は若かりし頃にはどこか青臭いぐらいの正義感に突き動かされて生きてきたのでしょう。でも、年をとるにつれ世の中はそんな綺麗事だけでは動かないことを知っていきます。彼らの年代というのは組織の中で生きるために自分の正義感と組織の体面の折り合いをつけて生きられるようになった頃なのだと思います。それが梶警部によって揺らぐのです、上司に意見し、まわりをかき混ぜ「梶を死なすまい」「真実を明かしたい」とあがく姿がとても印象的でした。でもやっぱり結局は…どうなったのかは実際に本を読んでください。
梶が守ろうとしたものが今ひとつしっくり来なかった。という感想を聞きました。確かに“大山鳴動して鼠一匹”という感はぬぐえないかもしれません。とはいえ、そこまで至るまでに物語に編み込んであるセリフの重さを損なうものではないと思います。ちょっと古臭くって、熱いセリフにストレートに反応して涙をたっぷりと流させていただきました。仕事や信念と共に生きること、それに悩んだりあがいたりしている人にはぜひともおすすめです。
今年の読書日記は本日が最終更新となります。新年は6日から。それまでのあいだ、しばし読書日記バックナンバーをお楽しみください。「私も読んだよ〜」なんていう感想もお待ちしております!
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